「こんな人たちに私たちは負けるわけにはいかない」。東京都議選の応援演説で群衆の「辞めろ」の声に色をなし、批判者を敵視するような発言をしたのは、わが国の首相。たとえ弾圧の犠牲となっても「私に敵はいない」と語った人が隣国にいる▼中国の民主活動家、劉暁波氏。2010年、国家転覆の罪に問われた法廷での陳述文の一句だ。1989年の天安門事件の悲劇に屈せず、一党独裁廃止、言論の自由を訴え続けた。「自由を奪った体制に言いたい。私には敵も憎悪もない」「最大限の善意であなたがたの敵意と向き合い、愛で憎悪を解かしたい」▼人権を求め非暴力で闘う人として10年、ノーベル平和賞に選ばれたが、中国政府が「内政干渉」と反発。劉氏は獄中のまま、授賞式でこの文章が読み上げられ、空席にメダルが贈られた▼がんとも闘い、今年5月に末期状態となって病院に移されたが、61歳で他界した。厳しい監視は変わらず、「十分な治療を受けているのか」と海外から受け入れの声が相次ぐさなか▼「自由への人間の欲求は力で止められない」「私は望む、言論弾圧の最後の犠牲者となることを」と同じ陳述文にある。中国の民主化運動の象徴にとどまらず、言葉の一つ一つが、これからの世界を生きる人の勇気の源になる。(2017.7.15)