牡鹿半島沖に浮かぶ網地島(石巻市)に1739(元文4)年、黒塗りの帆船が現れた。ペリーの黒船艦隊が浦賀に来航する110年以上も前の話。後にロシア船だと判明する。日本が国を閉ざす中、島民は舟で近づいて交流した。記録が残る日露初の交易だという▼日本人で初めて世界一周したのは、石巻の千石船「若宮丸」の漂流民だった。牡鹿半島の鮎川では明治時代、日本の近代捕鯨が幕開けする。石巻や太平洋に突き出た牡鹿半島は昔から、海へ開かれた地域だと分かる▼その牡鹿半島などを舞台に22日、「リボーンアート・フェスティバル」という芸術祭が開幕する。アートと音楽、食がテーマの新しい総合祭をうたう。期間は9月10日までの51日間。東日本大震災で傷つき、復興半ばの地域にどんな風が吹くのか、楽しみだ▼タイトル「Reborn-Art(リボーンアート)」のArtはラテン語の「Ars(アルス)」が語源。技や術(すべ)を意味する。「Reborn-Art」はつまり「再生のための技」であり、「生きる術」の意味も込めたという▼アーティストらが被災地で、歴史や文化の層をいかに掘り起こし、震災後の今や生きる術をどう表現するのか。どんな出合いがあるのか。地域の未来を開く芸術祭となるよう期待したい。(2017.7.16)