<白寿近しステージに立つ我(われ)息弾む>。友人たちが年重ねの祝う会を開いてくれ、その時即興で作った俳句という。巡る日々は「春近し」のように心が躍っている-。季語や字数の定型にとらわれない、正直な心情が伝わってくる▼100歳を超えても現役医師だった日野原重明さんがきのう亡くなった。105歳。ある随筆によると「2万2千個の遺伝子で使っていないものもたくさんある」として、98歳になって俳句作りを始めた。ピーンと来たら、常に携行するメモ帳に記した▼年老いてなお、物事に積極的に取り組む姿を見せてくれた人であった。人生の転機は1970年、58歳で遭った「よど号ハイジャック」だった。搭乗から4日間拘束され、地上に降り立った時「命が与えられた」と受け止める▼間もなく「人は始めることさえ忘れなければ、いつまでも若い」と思い、実践していく。2000年には75歳以上の生き方を提唱する「新老人の会」を立ち上げた。スローガンは「愛し愛される」「創(はじ)める」「耐える」だった▼東北にも目を向けた。東日本大震災で宮城県南三陸町を慰問。「私も生き延びて復興を見たいのです」と自著『日野原重明一〇〇歳』に書いた。きっと息を弾ませて再訪したかったに違いない。被災地への遺言と胸に刻む。(2017.7.19)