「本当なら、新たな風評でホヤの輸出再開はまた厳しくなる」。石巻市のある漁業者は、14日報じられた川村隆東京電力会長の発言に驚いた。福島第1原発のトリチウム水の処分を巡り、「(海洋放出の)判断はもうしている」と語った問題▼トリチウムは原発の汚染水から除去不能な放射性物質で、未処理の残水はタンクにためられる。それを希釈し海に投棄したいというが、量は約78万トンと途方もない。ホヤは原発事故の影響を今も懸念する韓国の輸入規制が続き、「風評は海外に及ぶ」と漁業者▼処分を巡る論議では、政府の原子力規制委員会幹部は海洋放出案を強く推す。が、漁自粛で試験操業を強いられている福島県漁連は猛反発。同県内の生協関係者からは「海洋放出されるなら、復興支援企画に東北の海産物は入れないで、との反応が西日本からあった」と聞いた▼タンク保管にも限界があり、何らかの方法で解決するほかない。政府は小委員会を設けて処分案を検討中だが、それを飛び越えての東電会長発言は波紋を広げた▼「風評は必ず発生する」と、いわき市が地元の吉野正芳復興相は反対を訴え、内堀雅雄同県知事は不快感を表明。「社の判断でなく、誤解を招いた」と東電は謝罪したが、トップの勇み足で事態は八方ふさがりだ。(2017.7.20)