「ボールを恋人のように扱いなさい」。サッカーの神様と呼ばれるブラジルのペレの言葉だ。柔らかなボール扱いを培ったのは貧乏な子ども時代の遊び。手近なグレープフルーツなどを、足で体の一部のように扱う技を路上で磨いた▼大草原にゲル(テント式住居)を張り、馬で羊を追って駆け巡る。家族と自然の懐で毎夏暮らした故国モンゴルの経験が、大相撲の横綱白鵬関の体と野性味を育てたと聞く。そこに、32歳の今も過酷な基礎運動を自らに課し続ける厳しさが加わった▼強さの秘密を数年前、NHKの番組で知った。重い力士の突進にも、上半身が「耐震構造」のように柔らかに力を逃がし、強靱(きょうじん)な足腰が微動だにせず体を支える。瞬発力の数値は陸上短距離のウサイン・ボルト選手に匹敵するという▼横綱に君臨して10年の白鵬関が、名古屋場所でついに前人未到の通算1048勝目を挙げた。けがに悩まされながら、夏場所に優勝して復活。横綱、大関陣に休場が相次いだ今場所も、抜群の安定感で土俵を沸かせる▼「去年1年間苦しかったから、ひと味もふた味もおいしい」と、浅香山親方(元大関魁皇)の大記録に並んだ20日の談話が印象深い。偉業の次の夢は親方になることと報じられたが、新たな境地の強さをまだまだ見せてほしい。(2017.7.22)