「ただ働きが増える」「長時間労働が適法にされる」「残業代をなくしたい経営側の都合そのもの」。こんな批判が広がっていた。政府が導入を掲げた「高度プロフェッショナル制度」。年収が高い一部の専門職を残業代支払い対象から外す内容だ▼政府は、働く者を守る目的で労働時間を規制してきた労働基準法の改正案として早期成立を目指す。「時間でなく成果で評価される働き方」と改革を強調するが、非人間的な「残業代ゼロ法案」との異名もある。反対の声を上げるのが、社会問題となった過労死の遺族たち▼「人を無制限に使える環境になれば、犠牲は後を絶たなくなる」と仙台市の前川珠子さん(52)。東北大准教授だった夫は5年前、東日本大震災で被災した研究室の復旧に日夜没頭した末、うつを発症し自死した▼遺族の仲間らと「東北希望の会」をつくり、悲劇を防ごうと活動する。肌で感じるのは、逆に「成果」への要求が強まる職場の空気。弱い立場の若い働き手が過労自死し、新たな遺族が活動に加わってくる▼連合といえば、日本最大の労働者組織。だが、トップが政府との取引に応じて法案をいったん容認し、厳しい批判を受け撤回するという迷走を演じた。残業代ばかりか人の命も削りかねない企業社会に希望はあるのか。(2017.7.28)