「記憶は、過去のものでない。それは、すでに過ぎ去ったものでなく、むしろ過ぎ去らなかったもののことだ」。詩人の故長田弘さん(福島市出身)が詩文集『記憶のつくり方』のあとがきに書いている▼文章は続く。「とどまるのが記憶であり、じぶんのうちに確かにとどまって、じぶんの現在の土壌となってきたものは、記憶だ」と。人が記憶を現在に投影しながら生きていけば、過去はまさに現在の中にある。8月、余計に心に響く言葉である▼広島は被爆から72年の「原爆の日」を迎えた。9日は長崎原爆忌である。核兵器禁止条約が国連で採択されながら、核の傘の下にある日本は条約に賛同しなかった。この状況をどう捉えるか。一人一人が自問自答するときかもしれない▼先日、仙台市青葉区の錦町公園で、核廃絶を願う「いのり」の像を見た。宮城県原爆被害者の会が23年前に設置した。少女は膝を折り、手のひらに折り鶴を乗せている。「過去を踏まえて未来へ」。そんなメッセージが伝わってきた▼ユダヤ人物理学者の故アルベルト・アインシュタインの「予言」を思い出す。「第3次世界大戦でどんな兵器が使われるかは分からない。だが、第4次なら分かる。石とこん棒だろう」。次の大戦があれば世界は吹っ飛ぶことを暗示している。(2017.8.6)