「人」の字は人間を側面から見たときの姿をかたどっているが、勝手な解釈をすれば、1人を後ろで誰かが支えているように見えなくもない。案外、人はそうして生きている▼秋田県内で7月下旬に降った記録的な大雨。大仙市の雄物川などが氾濫し、住宅の床上・床下浸水は計2100棟を超した。しかし死者やけが人はゼロ。なぜ重大な災害に至らなかったのか。背景を探ると、秋田地方気象台の和田幸一郎台長(59)の存在が浮かび上がる▼4月に着任した和田台長はすぐに県内を回り、全市町村長と携帯電話の番号を交換。このホットラインが大雨時に生きた。12首長へ発信、逆に受信は7回。「危機感の共有ができた」(和田台長)という。自治体トップにとって、台長とのやりとりは被害を想定する上で大いに役立ったろう▼豪雨に備えた訓練もやっていた。大雨被害の1週間ほど前、仙北市など3市町と共にテレビ電話などを使って連絡体制を確認し合った。東北6県で初めての演習だった▼和田台長は実は苦い経験を持つ。盛岡地方気象台長だった昨年8月、台風10号により岩手県岩泉町のグループホームで9人が死亡。「市町村長と話し合う関係づくりの必要性を痛感した」と言う。マニュアルにはない地道な仕事が陰ながら人を支えている。(2017.8.12)