脚本家倉本聡(そう)さん(82)は戦争中の小学生時代、上山市小倉という蔵王温泉近くに学童疎開した。見るもの全てがカルチャーショックだった。体が大きい地元の少年たち。周囲は山と田畑だけ▼倉本少年は古里東京が恋しくて仕方がない。父母、きょうだいにも会いたい。ついに仮病により「強制送還」を勝ち取る。子ども心に思ったのは「戦争は人と人との関係を引き裂く」。自身と著名人との対談集『みんな子どもだった』で詳しく語られている▼倉本さんがオリジナル脚本を書くシニア向け昼帯ドラマ『やすらぎの郷(さと)』(テレビ朝日系)の評判がいい。舞台はテレビ界に貢献した脚本家や女優たちが入る老人ホーム。テレビの現状を痛烈批判し、戦争を扱う内容でも業界に疑問を投げ掛ける。「史実を安っぽい恋愛ドラマにしている」「視聴率優先ではないか」とのせりふが飛ぶ▼常々、創作活動について「リアリティーを大切にする」と語る倉本さん。だから戦争を描くときの根っこにあるのは学童疎開だ。「戦争はむごい」との信念はそうして育まれた▼「不戦」「平和」「追悼」「反省」。きのう、飛び交った言葉をどれほどの人が現実感を伴って聞いただろう。戦前回帰が懸念される「安倍劇場」は一体どこへ行くのか。シナリオを読み直したい。(2017.8.16)