「この夏は長雨の上、やませ(北東からの季節風)が冷たく、稲穂が出そろっていない田もある。いつ稲刈りができるか」。東日本大震災の被災地、石巻市北上町の農業大内弘さん(54)は重い鈍(にび)色の空を見上げる▼北上川沿いで被災農家ら約70戸の耕作を引き受け、地元の農業復興を担う。「7月までの暑さで稲はよく育ち、順調に出穂したが、雨と寒さで伸びが止まっている」。8月下旬から収穫予定だったわせ種・五百川をはじめ、主力のひとめぼれの生育も2週間以上遅れ、「コメの品質が心配だ」▼東北は2日、管区気象台が「梅雨明けしたとみられる」と発表したが、夏がないまま秋雨の季節になったよう。雨は7月22日からきのう16日まで26日間続けて降り、同気象台が1926年に雨量を記録し始めて以来4番目の長さになった▼昨夏は台風10号が豪雨を降らせ、被災した岩手県や北海道が主産地の野菜も高騰した。「今は東北産の夏野菜が値上がり気味だが、雨と低温で大打撃を受けた産地は幸い、まだないようだ」と仙台の青果物卸売会社▼残念なのは、海開きをして大勢の客を待っていた被災地の浜、思い切り泳げぬうちに夏休みが終わる子どもたち、夏物商戦のにぎわいを期待した店々。頼みの太陽もどこかで雨宿りをしているのか。(2017.8.17)