秋田や山形では昔から、つつが虫病に悩まされてきた。江戸後期の紀行家菅江真澄が1814(文化11)年に著した『雪の出羽(いでわ)路雄勝郡』にもツツガムシが登場する。現在の湯沢市の記述で<毛螫(けだに)の螫(さし)たるときは身におぼゆることもなう、かくて発熱して…>とある。秋田ではツツガムシをケダニと呼んで恐れた▼ツツガムシはダニの一種。刺されると高熱を発し、亡くなる農民も多くいた。湯沢市や横手市など秋田県南の雄物川流域には「ケダニ地蔵」や「ケダニ神社」などが点在する。かつては神仏に祈るほかなかった▼祈りたい状況は今もある。野山にいるマダニが媒介する感染症患者が増えている。特に、致死率の高い「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の患者は今年64人を数え、過去最多だった2014年の61人を既に上回った▼SFTSは13年に国内で初めて確認された新しい感染症。これまで280人の患者が報告され、うち58人(7月26日現在)が亡くなっている。マダニからペットや野生動物にも感染する。西日本の50代女性は昨年、野良猫にかまれた後に発症し死亡した。有効な治療薬はないという▼死に至る病だったつつが虫病の治療法は研究者らの苦闘の末、戦後に確立された。人とダニとの闘いは、まだまだ続きそうだ。(2017.8.20)