応急危険度判定士をご存じか。災害などで被災した建物を調べて損壊状況を判定する。東日本大震災では、全半壊が東北で約36万棟に上り、自治体や民間の建築士らが担う判定士が休みなく歩いた。避難指示解除後間もない福島県の原発事故被災地の街では、活動が今なお続く▼3月末、6年ぶりに避難指示が解除された同県浪江町。JR常磐線が再開し、仮設商業施設も開いたが、商店街や住宅地に人けはない。軽ワゴン車で街を回る2人の応急危険度判定士に同行し、ある店に家主夫婦の立ち会いで入った▼閉め切られた店内に厚いガラス片が散乱する。「人の不幸につけ込んで」と家主が指さしたのは、壊された陳列ケース。原発事故で必死に避難した間に商品を盗まれた。「周囲の店も戻らず、商売はもう無理」▼次に回った民家の庭にはイノシシの足跡があった。天井が雨水で腐り、ネズミかハクビシンか、ふんが臭った。3軒目もイノシシらしきものにアルミ扉を破られて荒らされ、小動物の爪で至る所をぼろぼろにされた▼「一度は帰還を諦め、避難の解除で希望が湧いたが、家を見るとまた心が揺らぐ」と別の家主。「被災地の現実は外から見えない」と判定士たちも嘆息する。多くの家々が解体されていくが、「再建」の未来はまだ見えない。(2017.8.25)