気仙沼市唐桑町は、小高い山々がそのまま波間へと落ち込む、典型的なリアス海岸が続く。海は豊かな恵みをもたらすが、自然がひとたび牙をむけば、出漁したまま二度と戻らぬこともある▼同町出身の女性詩人、梶原しげよさん(1920~2015年)は海を多くモチーフに取り上げ、生涯一貫して生と死をテーマに詩作を続けた。国内ではそれほど知られていないものの、欧米やアジア各国の言葉に翻訳され賞に輝くなど、高い評価を受けている▼首都圏を制作の場としていたが「叔母の詩には、古里・唐桑の美しい自然、そして海に生きる人々の暮らしが反映されています」。生家の早馬神社宮司でもある、おいの忠利さん(77)は語る▼源平合戦期の武将梶原景時の兄景実が1217年に創建したという同神社。その駐車場の一角に9月19日、しげよさんの業績を紹介するギャラリーが開館する。参拝者休憩棟に併設され、約30平方メートルの室内に肉筆の手紙や詩集、パネルなどが並べられる▼「唐桑に根差して詩心を育んだ叔母から、何か感じてもらえればうれしい」。目の前には宿浦漁港。東日本大震災では15メートルの津波が地区を襲い、復興の真っ最中だ。海の優しさと厳しさを歌った詩人は、紛れもなくこの風土から生まれたのだと実感できた。(2017.8.27)