通勤電車が駅で停車中、車窓に赤トンボが止まった。じぃっーと見ていると、昔、幼なじみと野を駆けた風景が思い浮かんだ。背よりも高いススキの穂が揺れ、風の音さえよみがえった。音が伴うこういう記憶の映像をサウンドスケープと言うらしい▼「風景には音が欠かせない」。カナダの現代音楽家が唱えた概念で、地域に目印となるランドマークがあるように音で思い出す場所もあるという。「音景」とでも言った方がいいかもしれない▼十和田市の奥入瀬渓流。国土交通省青森河川国道事務所などは2、3の両日、せせらぎを静かな環境で体感してもらおうと、沿道14キロのうち区間10キロで車の進入を自粛するように呼び掛ける。初めての試みで、担当者は「音から奥入瀬の魅力をたっぷり味わって」とPRする▼ただ今後気になるのは自然保護を旗印にした車の締め出しである。足腰の弱い高齢者が行きにくくならないか。先の担当者は「観光バスは規制しにくい。いろいろ課題がある中で音を守っていくために何ができるのか、実験を重ねていきたい」▼風景の「景」という字を広辞苑で調べると、「風情を添えること」とある。音、色、香りによって目に見えるものは印象が違ってくる。週末、奥入瀬にでも行こうか。赤トンボはいるだろうか。(2017.9.1)