朱色を基調に赤、黄、緑や黒の模様が無数の島のように散らされ、独特の美しさだ。知人が住む弘前市を訪ねると出合う津軽塗。あるそば店のテーブルも津軽塗で、長年使われながら傷一つない▼「津軽のばか塗り」という。17世紀に始まる技法は、木地磨きから塗り、研ぎを約40工程も重ねて完成まで2カ月。「ばか丁寧」から来た言葉だ。7月に国の重要無形文化財に指定された名産品だが、「街で老舗の津軽塗の店が先日廃業した。残念」と知人▼白と黒の壁の大きな店は古い城下町の象徴だったが、津軽塗が売れなくなって久しいと聞いた。33年前に約20億円あった生産額は10分の1に激減。弘前津軽塗商工業協同組合は「丈夫さ故に商品の買い替えも少ない。新しい客を開拓しないと」と悩む▼伝統工芸の危機は深刻だ。仙台市に伊達政宗が鉄砲足軽たちに作らせたという毛筆「仙台御筆(おふで)」があるが、やはり需要が減り、技能を継ぐ職人は1人だけ。二戸市特産の「浄法寺漆」も厳しい状況だったが、市が復権に力を注ぐ▼漆生産を担う漆かき職人を昨年度から募り、国の制度資金で4人を非常勤職員にして育成中。地元産の漆器を買ったり、漆で塗装したりする飲食店や旅館にも助成をする。「後継者が定住し、漆の未来を開いてほしい」と願う。(2017.9.6)