「未和の無念さ、悔しさ、遺族の悲しさを決して無駄にしないで」。2013年7月、東京都議選などの取材に追われていたNHKの女性記者佐戸未和さん=当時(31)=が突然の心不全で逝った。残された両親の訴えで4日、NHKが事実を発表した▼個人の裁量任せの働き方だったという。亡くなる1カ月前の時間外労働は159時間に上った。既に過労死として労災認定されていたが、今年7月の命日を過ぎて、「再発防止につなげるため公表を」と強い要望があったという▼「今でも現実として受け入れることができない」。両親のコメントには、4年で解けない理不尽への憤りがにじむ。公表を望んだ心情に映るのは、過重労働に前途を奪われた若者の相次ぐ悲報、「過労死を許さない」という世論の変化ではないか▼「命より大切な仕事はない」。おととし暮れ、過労自殺した電通の新入社員高橋まつりさん=当時(24)=の母親の言葉だ。違法残業事件として先月始まった裁判では社長が自ら謝罪した。が、働き過ぎを「悪」とせぬ企業社会の土壌は一朝一夕に変わらない▼本来、残業時間の上限規制など「働き方改革」を巡る法案が臨時国会で論議されるはずだったが、唐突な衆院解散、総選挙。若者たちの無念に責任を持って応えてほしい。(2017.10.6)