東日本大震災の津波被災地だった南相馬市原町区萱浜に先月末、約140人のボランティアが集った。毎秋恒例になった菜種の種まき会。新たな特産品を育てようと、農家有志の「南相馬農地再生協議会」が挑む菜種栽培の一環だ。計60ヘクタールの畑が市内に広がる▼菜種を搾った食用油が3年前に発売された。「油菜(ゆな)ちゃん」という名で「長持ちする」と評判だ。今春にはドレッシングも。地元にある相馬農高の生徒たちの研究組織「農業クラブ」が、農家と一緒に栽培しながら商品開発に取り組んだ▼しょうゆをベースに12種の味をブレンドし、「先輩たちが2年がかりで完成させた」と農業クラブ理事長で3年の天沼佑貴さん(17)。商品開発は続き、「次は、私たちの手作りみその味を生かせたら」と食品科学科3年の門馬未裕さん(17)は目を輝かせる▼天沼さんの実家は隣の相馬市の農家。原発事故の風評の中、親は稲作再開に苦労した。「高校で地元の人とつながり、復興に関わることができた」。2人は来年、それぞれ北海道と山形県の大学で農業をさらに学びたいという▼南相馬産の菜種油は、英国メーカーのせっけんの原料としても販路を広げている。「若者は被災地の未来の希望だ。新しいアイデアを持ち帰ってほしい」と農家たちも期待する。(2017.10.8)