花言葉のほとんどは花の特徴をうまくつかんで表現する。「桃」は西洋なら「あなたのとりこ」。それが日本なら「天下無敵」。えっ、テンカムテキ? 香り豊かな花とは程遠いイメージのように思う▼諸説がある。一つは桃太郎伝説。鬼ケ島に鬼退治に行き、目的を見事に成就させた。もう一つは古事記の逸話で、イザナギノミコトが雷神に向かって桃の実を3個投げつけると、雷神が退散したという。桃はいずれも強さを世間に示す象徴だった▼囲碁の井山裕太さん(28)は対局中、あの手この手を考え、いつも顔がピンク色に染まる。10の360乗の打ち方があるといわれる戦いである。棋譜を振り返る際は、心の奥底に鬼の形相の修羅をしまい込むようににこやかに語る▼偉業である。2度目の全七冠制覇。王座、天元、棋聖、十段、本因坊、碁聖のタイトル戦を防衛したのに続き、昨年11月に失った名人位を奪還した。「普通、一つタイトルを失えばほころびが生じるのに、残りの6冠を難なく防衛し取り戻したのがすごい」と驚きの声が他棋士から上がる▼今後は韓国の国際棋戦で「世界一」を目指し、新たな七冠防衛ロードに挑む。「まだ自分は完成しているとは思っていない」と成長途上を強調する。その未来に桃の花はたくましく咲き誇るか。(2017.10.19)