この夏、現代アートを中心とした祭典でにぎわった石巻市の牡鹿半島を先日巡った。潮の香りを含んだ風が冷たい。東日本大震災から6年7カ月余り。見渡す風景は今なお、津波の爪痕が残る▼衆院選の話題に住民からため息が漏れる。「選挙に600億円もかけるくらいなら、復興に心血を注いでほしい」「漁業の復興はもう忘れ去られている」。震災復興を問う議論は消費税増税、憲法改正や北朝鮮の脅威の前にかすんだ▼浜は今、カキの出荷作業に忙しい。宮城県漁協の今季の生産目標は計1700トン。震災前の約5割にとどまる。水産加工業者は震災で失った販路を回復できずにいる。人手不足と人件費の高騰にあえぐ業者もいる。アベノミクスの成果は被災地には届いていない▼被災地の課題は多いのに、これが風化なのだろうか、と感じる衆院選だ。各党は公約で復興に触れているが、優先度は低い。重点政策の項目を掲げた見出しから復興の文字が消えた党もあれば、復興を重点政策に盛り込んでいない党もある。復興は遠くに押しやられた感がある▼そもそも今回の解散総選挙は何のため、誰のためであったのか。モヤモヤした感情が拭えないまま、きょう投票日を迎えた。嘆いていても前に進まない。被災地からの思いを1票に込めたい。(2017.10.22)