季節の花でないのはお許しいただきたい。作家の故井上靖さんは幼い頃にアジサイを好まなかった。その理由を随筆集『わが一期一会』で明かしている。「雨をしっとりと吸って重たげでもあり(中略)こうした時期(梅雨時)に咲かねばならぬ花としての諦めも持っている」▼大人になるまで多くの経験をし、さまざまな本も読んできたからこそ、かつてアジサイに抱いた感情を冷静に言語化できるようになった、とも記す。記憶の一つ一つに意味付けするのは自分を見つめることであろう。本はその助けになってくれる▼きのう読書週間が始まった。1947年、「読書の力によって平和な文化国家をつくろう」と出版社、書店、新聞社などが初めて催した。当初は反響が都市部に限られていたが、年を追うごとに全国へ広がっていったという▼理念や活動をみると、何やら国連教育科学文化機関(ユネスコ)に重ならなくもない。文化で平和を実現しようという願いは一緒である。とするなら、米国やイスラエルの脱退表明という波紋も、読書で培った眼でしっかりと捉えたい▼自分は何者なのか。住まう東北は、日本は、世界は…。解明のヒントは本にある。そのためには買って、借りてページをめくろう。あなたの「花」がきっと咲くはずである。(2017.10.28)