「ハッハッハッ」「パッパッパッ」。60~80代の30人が息を合わせる。足を前後に広げ、両肩を回しての発声練習もあり、どの声もよく伸びる。「力が抜け、高いミの音まで出たよ」。指導する後藤優子さん(38)が拍手した▼東日本大震災の被災者が宮城県内外から入居する仙台市泉区の泉中央南市営住宅。集会所を毎月にぎわせるのが、丸2年を迎えた「歌声サロン」だ。後藤さんはメゾソプラノ歌手。友人の田村聡子さん(38)のピアノで住民と歌う▼秋らしい「旅愁」「遠くへ行きたい」を合唱し、後藤さんは「お嫁に行った日を思い出して」と女性らを沸かせて「秋桜」を独唱。「古里の家をなくした者同士、歌で仲間になった。こんなに楽しいと初めて知った」と住宅の町内会副会長、佐々木かつ子さん(73)は言う▼機縁は区の被災者支援担当からの依頼。見ず知らずの上、個室にこもる環境で「最初は互いに遠慮していた」と後藤さん。「心を温め、あしたの元気になる歌を選び、回を重ねる度に表情も声も明るくなった」▼歌声サロンには近隣の高齢者施設や町内会からも参加者があり、50人を数える回も。応援している公益財団法人「音楽の力による復興センター東北」は、「サロンを育て、被災地の公営住宅に広められたら」と期待する。(2017.11.3)