横綱白鵬関が好むことわざが古里モンゴルにある。<山が高いからといって引き返してはならない。行けば必ず越えられる>。自著『相撲よ!』に「山を越えようとする中で心が強くなっていったような気がする」と書いている▼険しかろうが、風が強かろうが、草原より一人歩み出て峰に挑み続ける姿には感動さえ覚える。同じ角界を見渡せば、もう一人のひたむきな姿勢にも拍手を送る。この力士の場合、志は「山」が「道」になろうか。長い長い道。障害物があってもコツコツ壊して再び歩く▼安美錦関(青森県深浦町出身)である。あす初日を迎える九州場所で、1年4カ月ぶりに幕内の土俵に上がる。アキレス腱(けん)断裂の大けがを乗り越え、39歳での再入幕は昭和以降で最年長。幕内力士の引退平均年齢が30歳前後といわれる中、何という粘り腰だろう▼年寄名跡「安治川」を既に持つ身。現役に固執するのは7月に第3子となる長男が誕生したのが大きい。「上の2人の子はだいぶ相撲も分かるようになってきて、3人目の子も分かるまで頑張りたい」▼2歳年長の先輩、振分親方(元小結高見盛、板柳町出身)とは共に実家が五能線沿いにある間柄。新十両、新入幕とも同じ場所だった。今、進む道に前を行く者は誰もいない。孤高の歩みが続く。(2017.11.11)