「無理偏(へん)に拳骨(げんこつ)」と書いて「兄弟子」と読む-。角界のしきたりの一端を伝える言葉だ。相撲部屋の先輩には絶対に逆らえず、殴られても当たり前の意味とか。そんな上下関係が暴力を生み、入門後間もない若者の命を奪った事件が10年前にあった▼厳しさに耐えかね部屋を抜け出した新弟子を、親方がビール瓶で殴打。「かわいがってやれ」の一言で、兄弟子たちが制裁の暴行を加え続けた。元親方らは傷害致死罪に。事件を教訓に、日本相撲協会は古い「暴力」の体質を一掃したはずだが、新たな問題が浮かんだ▼先月下旬の秋巡業中、横綱日馬富士関が同胞のモンゴル出身力士らの宴席で、平幕貴ノ岩関に暴行したという。無抵抗の相手をビール瓶や素手で執拗(しつよう)に殴ったと報じられた。日馬富士関は、九州場所3日目の14日になって、謝罪の言葉と共に休場した▼釈然としない。同協会が問題の調査を始めると公にしたのも同日。貴ノ岩関は頭にけがを負い、巡業先の県警に被害届が出されていたが、同場所前の理事会では親方衆の話題にも上らなかったという▼横綱の不祥事では7年前、本場所中に酔って一般人を殴り、引責引退した朝青龍関の問題があった。問われたのは横綱の「品格」だったが、昨今の大相撲人気でどこかへ忘れられたのか。(2017.11.16)