茶の湯の心構えを説く「利休七則」がある。茶は服のよきように、炭は湯の沸くように、花は野にあるように、夏は涼しく冬暖かに、刻限は早めに、降らずとも傘の用意、相客に心せよ。背筋がピンと伸びるような、おもてなしの極意である▼あるじと客の心の一体感をどうやってつくるかが大切なのだろう。同じ空間にいる者同士が尊重し合って「語らい」は始まる。古来の教えは、400年以上の時を経てなお色あせない▼東北のホテルで、客室にスマートフォンを設置し無料で貸し出すサービスが広がっているという。外国人旅行者は料金や通信環境を気にせずに利用できる。まさに「相客に心せよ」を地でいく計らいであり、茶聖もさぞニンマリしているに違いない▼外国からの訪日客は今年、過去最多だった昨年を約400万人上回る2800万人に達する見通しらしい。結構なこととはいえ、列島のどこに行っても同じような接待では客足も鈍る。土地ならではの花を「野にあるように」見せてこそ日本らしさではないか▼3年後、東京五輪が来る。街中の交差点では、多くの外国人がスマホをいじって信号待ちしているかもしれない。この人たちに何とかワビやサビを感じてもらうには…。ティーバッグの茶をすすりながら考えては、駄目だろう。(2017.11.17)