日本海に浮かぶ酒田市の離島・飛島にかつて「タコ穴」があった。寒さが厳しくなると、タコが餌を求めて磯近くに寄ってくる。そして岩穴などを見つけて住まいとした▼タコが捕れるタコ穴は、島民には大事な財産だった。登記が必要で、昭和の初めまでタコ穴税が課されていた。娘が結婚する際、嫁入り道具としてタコ穴を譲る風習があった。タコと人の付き合いは古くて深い▼宮城県の三陸沿岸で、マダコがかつてないほどの豊漁だ。南三陸町では水揚げが10月だけで115トンに上り、昨シーズン4カ月間の計63トンを上回った。石巻魚市場でも10月の水揚げが昨年同月の8倍を記録した▼原因は海水温の上昇らしい。マダコは海水温が7度以下だと生存できないとされる。漁業情報サービスセンター東北出張所(石巻市)の担当者が言う。「海水温が上がって三陸でマダコが越冬できるようになり、千葉沖などで産卵していたマダコが三陸で産卵し増えたのだろう」▼過去100年間に三陸沖の秋、冬の平均海面水温は0.8~1.0度上昇し、世界全体の平均値の約2倍だ。気象庁は「三陸沖では冬季と秋季の海面水温の上昇傾向が明瞭に現れている」と指摘する。暮らしに結び付くタコの豊漁は朗報だが、海の異変に喜んでばかりもいられない。(2017.11.20)