「福島産」というだけで、モモやリンゴ、ネギ、ナメコなどが首都圏で今も他産地より安値を付けられている。東京電力福島第1原発事故に由来した消費者側の抵抗感は薄まり、「買いたい」という人は増えたのに、流通での格差が改まらないという。先日の本紙が伝えた▼さらに厳しい状況にあるのは同県の水産物。安全でも当たり前に取って売ることができず、県の監督下でほそぼそとした「試験操業」が続けられている。重い壁が、原発事故後も尾を引いた汚染水問題の風評だ▼「われわれの代じゃなく孫、ひ孫のために解決してほしい」と同県新地町の小野春雄さん(65)。映画「新地町の漁師たち」の中で訴えた。苦境に耐え、海の未来に希望を託す人々の姿と声を、東京の映画監督山田徹さん(33)が5年余り撮影した映画で描く。12月3日から仙台で上映される▼美しい場面がある。岸壁でくすぶる日々だった漁師たちが、裸でみこしを担いで海に漬かり、子どものようにはしゃぐ。地元に伝わる「安波(あんば)祭」。漁業の神が海の潮で再生する神事に、映画は彼らの不屈の魂を重ねた▼「震災の映画など、もう見る人がいないと言われながら、各地で上映を重ねてきた。終わらない現実を伝えたい」と山田監督。桜井薬局セントラルホールで同15日まで。(2017.11.25)