<喜寿の二字草書にくづしキスとよむ唇さむし秋深くして>。『広辞苑』の編さん者、新村出(しんむらいずる)が詠んだ。言葉の持つ、果てしなく広くて深い世界に、老いてなお魅了されているよ、という心情がにじんでいる▼戦後、国語辞典の在り方の基礎を築いたとも言われる学者である。言語の意味を探る研究はもちろんのこと、新語や流行語に出合うと常時携行するノートにメモした。加えて語源も徹底的に調べ、書き記したノートは数千冊に及んだという(出久根達郎氏著『行蔵は我にあり』)▼きのう「ユーキャン新語・流行語大賞」が発表され、大賞に「インスタ映え」と「忖度(そんたく)」が選ばれた。ほほー、なるほどね。小欄も今年はいっぱい使わせてもらった。喜怒哀楽が伴って、さまざまなシーンがよみがえる▼でも、感傷にばかり浸っていては新村先生に申し訳ない。通常国会で使われ始め、色あせない「忖度」はもっと核心に迫りたい。成り行きでは流行語の年またぎどころか、国語辞典に「官僚などが首相周辺に気を回すこと」と新たな解釈が書き加えられよう▼師走最初の土、日曜日。新語・流行語トップテンを見ながら、今年一年の世の中の動きを振り返ってみてはいかが。どこか語源をたどる旅に似ていなくもない。今の日本と世界が見えてくる。(2017.12.2)