「甲子園で負けたから、人も記憶してくれた。悔いなんて全くない」。1969年の夏の甲子園で準優勝した三沢高(三沢市)の当時のエース、太田幸司さんに以前取材で聞いた。そこで耳に響いたのが、同じ年にはやったフォークソング『風』▼人生につまずいても夢破れても、一歩ずつ歩こう。振り返っても、風が吹いているだけ…。切なくも心を慰める歌が、悲運の投手のその後に重なった。歌ったのは「はしだのりひことシューベルツ」。レコードなどで数えきれぬほど聴いた▼作曲者のはしだのりひこ(本名端田宣彦)さんが72歳で他界した。『帰って来たヨッパライ』で伝説的な「ザ・フォーク・クルセダーズ」の1人。解散後はシューベルツや、『花嫁』をヒットさせた「クライマックス」などを率い、美しい曲作りが魅力だった▼長いソロ活動の傍ら、病気になった妻を「主夫」として支えた。この10年間はパーキンソン病と闘ったという。久々に姿を見せたのは今年4月、地元京都でのライブ。車いすでフォーク仲間と『風』を歌った▼動画共有サイトで聴く声に往年の高音はなかったが、名曲は人生の真実になっていた。「きょうが最後の歌唱になると思うが、もうちょっと生きててよろしいか」。ファンへのお別れの言葉だった。(2017.12.5)