「何、飲むすか?」「へば、ビールで」「おらにはワインを」。カウンター越しの会話ではない。大みそかの男鹿半島。ナマハゲに乱入された家でのやりとりである。潟上市の郷土史家天野荘平さん(68)は「時代が変わった」と苦笑する▼ナマハゲにはお膳と日本酒を出すのが決まり事だった。今や担い手は50~70代が中心で、飲み方も穏やか。道端で酔いつぶれているナマハゲに出くわすこともなくなった。「若者は行く先々でしこたま飲まされ、正体をなくしたものです」と天野さん▼男鹿半島から若者がいなくなったわけではない。伝統行事への関心が薄れたのが、ナマハゲ高齢化の主因らしい。「泣ぐ子はいねがー」とすごみを利かせようものなら、家に上がるのを拒否されることも▼一方、秋田市などの大学に通う留学生たちは、古来の習俗に興味津々。今年はドイツの若者がナマハゲデビューする。数年前から留学生を受け入れている地区では、「ナマハゲの起源はロシアなど外国の漂流者だろう。体の大きい留学生が演じると、迫力があっていい」と歓迎する▼北朝鮮船の漂着が相次いだ男鹿半島周辺。「そんなの昔からあったこと」と住民は案外、冷静だという。天野さんも「妙な具合に政治利用される方が心配」と成り行きを見守る。(2017.12.17)