1863(文久3)年創業のしょうゆ醸造店を継いだ渡辺和夫さん(47)は最初から難事を背負った。2012年1月、相馬市の山形屋商店の5代目社長に。東日本大震災の地震で大量の商品を失い、支援で息をつないだが、次の災いが待っていた▼福島第1原発事故で汚染水流出が続き、風評が福島県に降りかかった。しょうゆの売り上げも激減。「約20社の仲間と品質向上への勉強会をしていたが、事態は一変した」。検査で安全をPRしても無駄だった▼全国醤油(しょうゆ)品評会。業界が味と品質を競う大舞台だ。「消費者を呼び戻すには、そこで福島の名を挙げるしかない」と渡辺さんらは勝負を懸けた。翌13年の品評会で山形屋商店のしょうゆは初出品で最高賞に選ばれ、昨年まで4回の栄誉を重ねた▼「チーム福島の成果」と言う。既に同県産の日本酒が全国で声価を高めているが、技術指導に関わる県の研究者を勉強会に招いて知恵を学び、ライバル商品も分析し、製法に工夫を加えたという。昨年の品評会では仲間の4社も優秀賞を得た▼「受賞を契機に仙台のお客が増えた」と言い、渡辺さんの奮闘を見た2人の娘さんも東京から戻って今、商品開発を手伝う。「それでも福島産しょうゆの売り上げは震災前の4割減のまま。挑戦を続ける」(2018.1.4)