試合に敗れた翌朝はどうしても寝覚めが悪い。采配を振ったわが身を責める。「チクショー、この野郎」。そんなとき、仙台市中心部の自宅マンションからいつも散歩に出た。「東北大の片平キャンパスから広瀬川沿いへ出て山並みを見る。これがいいんだ」▼街角では行きつけのとんかつ屋のおじさんが店の奥で開店準備をしている。鮮魚店は仕入れ魚を忙しく店頭に並べている。「『ヨッシャー』と思う。息遣いを感じて、俺、この人たちのためにも街のためにも頑張ろうって思ってくるんだよ」▼享年70、星野仙一さんの訃報に接し、生前伺った話を思い起こしている。スポーツ部に在籍していた頃、ちょうどプロ野球東北楽天の監督や球団副会長だった。沈む心を闘争心に変えてしまう「燃える男」のパワーの源は街と人であると知った▼中日での鬼気迫る投球、中日と阪神を指揮してリーグ制覇、そして東北楽天で日本一と、まばゆいばかりの大輪が咲いた歩みのなかで、仙台での散歩はささやかな道端の露草だったか。だが、それは「俺は二流投手」と言っていた野球人がユニホームにそっと挿した花だったと思えてならない▼露草の花言葉の一つは「懐かしい関係」という。東北で誰が忘れよう、背番号77。きょうの七草がゆは何と苦いことか。(2018.1.7)