絵本『アッコちゃんありがとう はじめての社会見学』は、小学生のアッコちゃんが警察署を見学する物語だ。母親の心配をよそにハプニングを乗り越え、目的を果たす▼主人公のモデルは神戸市灘区に住んでいた浅井亜希子さん。1995年1月17日に起きた阪神大震災で命を落とした。当時、小学5年生だった。母の鈴子さん(64)は、親離れする娘に頼もしさと寂しさを感じた大切な思い出を絵本にして、9年後の2004年1月に自費出版した▼どうして切りの良い10年後でなかったのだろう、と思った人がいるかもしれない。04年はアッコちゃんが健やかに成長していたら成人になる年だった。鈴子さんにとって絵本は娘が生きた証しであり、迎えることのできなかった20歳の記念でもあった▼つい5年、10年を一区切りに復興を考えがちだが、被災者一人一人で時間の進み方や大切な節目は異なる。厄介なことに時計の針は前進するだけではない。阪神大震災から23年を迎える今も、鈴子さんはふとしたことで当時の苦しみがよみがえるという▼きょう8日は「成人の日」。新成人の門出を祝うとともに、東日本大震災などさまざまな理由でこの日を迎えられなかった人に思いを巡らせたい。それは遺族の心の復興を考えることにもつながる。(2018.1.8)