一生に一度の喜びがある。例えば若者が人生の扉を開け、祝福で輝く日。昔は男の子が「お山がけ」修行に出るなどの成人儀礼があった。今なら、未来の夢に挑む大学受験がそうか。その喜びをミスや不誠実で奪われた傷心はどう償えるのか▼「受験生の人生を狂わせてしまった」と謝罪したのは大阪大の副学長ら。昨年2月の一般入試の物理で出題ミスをし、本来合格だった受験生30人を不合格にした、と1年近くたって発表した。「問題に誤りがある」と外の指摘を受けながら、作成責任者が認めなかったという▼30人を新たに合格とし、今春の転入学を認めるというが、他の学部や大学に進んだ人もいた。努力がかなわなかったと失望したり、心機一転、別の道を志したり。若者が人生の選択に悩む、かけがえのない時間を奪ったのは名門大の「保身」だったか▼8日の成人の日には、「大人の美しさ」を夢見て選んだ晴れ着を、貸衣装業者の突然の店舗閉鎖で着られなかった女性が横浜市などで相次いだ。1人当たり数十万円を取りながら、責任者は不明に。楽しみだった成人式を泣く泣く諦めた人もいたそうだ▼若者の夢を育てるのも、傷つけて壊すのも大人だ。一生に一度の喜びや旅立ちの日を奪っていい「大人の事情」など、あってはならない。(2018.1.10)