言葉に出さずとも思いは相手に伝わっていることがある。そんなとき<背中で物を言う>とか<親の背を見て子は育つ>とか言う。一方、受け身として<眉を読む>や<目は口ほどに物を言う>という言い回しもある▼言葉のキャッチボールがない世界は一見味気ない。だが、見方を変えるとなかなかそうでもない。例えば、近くに住む義理の母が毎朝、仏壇の亡き夫に何かブツブツ言いながら手を合わせる。振り向いた顔をたまに見ると、決まって安堵(あんど)したような表情をしている▼ソニーが発売した新しい犬型ロボット「aibo(アイボ)」は人工知能(AI)を使って行動するのが特徴という。有機ELパネルの目はリアルに喜怒哀楽を表し、きっと口ほどに物を言うのだろう。実際に語らいがなくても、購入者は「飼い主」気分を味わえるに違いない▼そういえば20年ほど前、日本のおもちゃメーカーが犬の感情分析器を売った。集めた犬の声をデータベース化し、「寂しい」「むかつく」など200語に変換する。大ヒットしなかったのは深淵(しんえん)なるペット愛を簡単な言葉で単純化したからかもしれない▼きのう皇居で「歌会始の儀」があり、題は「語」だった。皇后さまは天皇陛下の「肩」を詠まれた。言葉がなくても響き合う世界をあらためて知る。(2018.1.13)