故田村隆一さんが詩や随筆に好んで使った一節がある。<時が過ぎるのではない 人が過ぎるのだ>(詩『Fall』)。流れるのは時間ではなく人間である、という意味だろう。忘却を都合良く使いこなすわれわれの本性を言い当てている▼これを自然災害の防災に当てはめると、人の弱い部分が見えてくる。東北大災害科学国際研究所はそれを百も承知で、まさに知見を地域に還元する闘いに挑んでいる。過ぎていこうとする人を立ち止まらせようとする活動である▼今村文彦所長はかつて本紙にこう語った。「研究成果発表だけの一方通行ではいけない。社会で活用してもらうことに(組織の)存在意義がある」と。東日本大震災から間もなく7年。風化にあらがうためにも被災地内外への発信と交流は重要と自覚している▼関東大震災に遭った物理学者の寺田寅彦が「防災の心得を小学校の教科書に入れよ」と訴えてから80年余り、阪神淡路大震災が起きて23年を迎えた。防災・減災がその都度語られながらも体系立てられていないだけに、災害研の果たす役割はますます大きい▼きょう、災害研のほか2個人2団体に河北文化賞が贈られる。今後の励みにもしてもらえるとうれしい。輝きを放つ業績は決して過ぎてゆかず、長く記憶に刻まれる。(2018.1.17)