「遺族が癒やされるために必要なのは三つの『T』です」。23年前、大学生の長女の命をストーカーに奪われた山内久子秋田看護福祉大教授の講演を以前、仙台で聴いた。それは涙(Tear)と時間(Time)、語ること(Talk)。終わらぬ無念が伝わった▼留守の部屋への侵入、無言電話、脅迫状。娘さんは話したこともない男に脅かされたという。こんな理不尽な被害者が後を絶たない。宮城県警へのストーカーの相談は昨年、901件に上り、加害者への禁止命令は23件と前年より16件増えた▼行為の手段が時代とともに広がった。しつこくメールを送りつけることが2013年の規制法改正で付きまとい行為に。ブログや「LINE」など交流サイト(SNS)の書き込みも昨年加わった▼16年に起きた東京都小金井市のストーカー事件では、音楽活動をしていた女性がライブ会場で刺された。加害者の男からツイッターで執拗(しつよう)な書き込みをされ、警察に相談したが「直ちに危害は及ばない内容」と判断された。SNSが規制対象でなく、その論議が法改正につながった▼内閣府の「男女間の暴力」に関する調査では、ストーカー被害を経験したという成人女性は10人に1人。痛ましい犠牲はもうたくさん。悩む被害者の声を生かしたい。(2018.2.1)