「もうやめてほしいのが本音」と相馬市の稲作農家佐藤徹広さん(65)は言う。福島県が2012年から行う県産米の全袋検査。風評対策で放射性物質の検出の有無を徹底して調べるが、生産者の負担も重い▼東京電力福島第1原発事故の前は、収穫したコメを庭先で業者に引き渡せた。今は30キロ詰めの袋の山を軽トラックで検査場に運び、1袋ずつ測定装置で「基準値未満」を確かめてようやく出荷できる▼「順番待ちが長く、数日かかる。袋の積み下ろしも年配の農家には難儀」という苦労と努力もあり、15年から全県で「基準値超え」ゼロが続く。県は他に例のない全袋検査を見直し、早ければ再来年、検体抽出方式に移行したいという▼福島と縁のあるわが家では地元農家のコメをよく食べる。が、安心のため全袋検査が必要と考える人はまだまだ多い。先日報じられた消費者団体の県民1550人のアンケートでは、3人に2人が「継続」を希望した▼逆に「全袋検査のために福島のコメが特別視される」という流通業者の声、首都圏では検査自体がよく知られていない現実も。コシヒカリを作る佐藤さんは「少しずつ個人の客を増やしている。時間はかかるが、唯一の風評克服の道」と言う。人と人のつながりで味わうコメが一番安心でうまい。(2018.2.3)