故井上ひさしさんは大学入試に何度か不合格になり、あるいは進学した上智大でも講義になじめず長期休学した。求めながら恋人もできなかった。数々の悲哀を味わったからこそ何とか小説や劇が書けている、と後に随筆にしたためている▼だからだろう。自作の喜劇『夢の裂け目』(2001年初演)で発せられるせりふが味わい深く胸に響く。<闇がなければこの世は闇よ>。「闇」を、さて、あなたはどう読むか。それぞれだろう。失敗、挫折、敗北、没落、空振り、負け犬…▼現在の中3が大学受験する21年1月からセンター試験に代わって導入される共通テストが、24年度以降は年複数回の実施になるかもしれない。国会で安倍晋三首相が「1回の試験だけで全てが決まるというのは、ほかの先進国ではほぼ例がない」と指摘。心の傷は深くあってはならない、とも読める▼課題は多い。「一発勝負」をやめれば、高校生は「今月も、来月もテスト」と負担が増す。加えて私立大の入試や国立大の2次試験を控え、前倒しでやれば高3の授業は駆け足となる▼災害復興のように、すぐに立ち直る社会をつくるということに何ら異論はない。要は手の差し伸べ方である。10代で闇を知るのも、それはそれでいい。出来の悪かった元受験生の独り言である。(2018.2.8)