群馬県嬬恋村出身でカルガリー冬季五輪スピードスケート銅メダリストの黒岩彰さんは子どもの頃、水田に氷を張ったリンクで滑っていた。35年前、後のメダリストを育てたリンクを視察した福島県川俣町の大内秀一さん(69)らは思った。「これなら自分たちにもできそうだ」▼東京電力福島第1原発事故で避難区域となった同町山木屋地区の「絹の里やまきやスケートリンク」。大内さんら当時、子育て中の父親らが試行錯誤しながら整氷技術を覚え、1983年にオープンさせた。「冬場に家にこもりがちな子どもたちの遊び場にしたかった」と大内さん▼親たちが丹精込めて整備する銀盤は、全国を舞台に活躍するスケート選手を輩出する「名門」に育つ。95年の福島国体では、県代表の14人中9人が田んぼリンク出身者だった逸話も残る▼避難指示解除に先立つ2016年2月、5年ぶりに復活した。今年は1月20日に開業。平日は町内の小中学生らが授業で使い、週末は家族連れが訪れる。先日はよさこいなどが演技を披露する催しも▼他の避難指示解除地区と同様、山木屋地区も子育て世代の帰還の足取りは遅い。「定住人口は減ったが、交流人口は維持できるかも」。にぎわいを生む天然のリンクが地域存続の助けになると大内さんは信じる。(2018.2.12)