「日本は狭い。海外に1カ月以上、1回は住んでみること」。米映画の話題作で特殊メークを手掛け、先日アカデミー賞を受賞した辻一弘さん(48)が帰国して語った。取材で日本の若者への助言を求められて▼10代で特殊メークの道を志し渡米。本場ハリウッドで成功した人だけに「他人の意見に流されず、自分のやりたいことを10年続けること」と歯切れ良く挑戦を勧めた。「内向き」と評されがちな世代にどう響いたか▼外務省が発表した昨年末のパスポート保有率。東北はほぼ8人に1人で、全国平均の半分だ。海外への旅や仕事、留学の少なさを示し、本紙は旅行業者の「県民性、地域性か」との戸惑いや、大学生の海外への卒業旅行さえ「他地域に比べ圧倒的に少ない」との分析を伝えた▼内向きが理由なのか。いや、東北には東北の事情があると感じる。東日本大震災。地元の街や産業は復興せず、家族の苦境を思って進路を変えたり、支援を得て学んだりした若者が多い。だが、未来を諦めてはいない▼「震災を契機に東北各地の古里に帰って家業を継ぎ、あるいは新しい店や仕事を始めた若い人たちによく出会う」。被災地を歩いて仕事をする知人から聞いた。取材経験からも同感だ。海外と古里の違いはあれ、若者の夢と決断は変わらない。(2018.3.23)