東日本大震災の被災者10人を乗せたマイクロバスの第1陣が石巻市の避難所を出発し、山形県最上町の温泉宿に着いたのは2011年3月28日のこと。一行は熱い風呂と柔らかい布団で、生活再建への活力を養った▼避難所は当時、津波で車を失った人が多かった。そこで最上町観光協会は送迎付き2泊3日のリフレッシュプランを企画。町が費用を負担し、12年3月末までに町内の赤倉、瀬見、大堀の3温泉に被災者延べ7400人を迎えた▼最上町のケースに限らず、食料、風呂、寝具がある旅館ホテルは震災後、多様な役回りを演じた。津波被災地では宿泊客と避難住民の命のよすがとなり、山形県など隣県では2次避難先や復興関係者の前線基地になった▼全国で相次ぐ自然災害を受けて、山形県旅館ホテル生活衛生同業組合は25日、熊本地震などの被災地の関係者を上山市に招き、災害対応をテーマにシンポジウムを開く。宿に求められる役割を再確認し、自治体との支援協定締結など事前の対策の重要性を訴える▼最上町の宿ではプランを契機に被災者の一部が常連客になった。地域貢献や備えに目配りできる企業には社会の見る目が違ってくる。旅館ホテルの多様な「おもてなし」の発信は宿の価値を高め、新たな交流につながるはずだ。(2018.3.25)