「長くて寒い仮設の冬だったが、やっと春が来た」。福島県飯舘村の住民が避難生活を送ってきた福島市内の仮設住宅。開設以来6年半、自治会長を務めた木幡一郎さん(81)は暖かな日差しに顔をほころばせる。村に帰る日はもうすぐだ▼福島第1原発事故後、この仮設に移った住民は110世帯余り。平均年齢は70歳近く、独居が多かった。自身も9年前に妻を亡くし、長男は南相馬市で働き、一人住まいだったが「寂しさなんてなかった」▼古里、家族と切り離されて引きこもり、心身の弱る住民が相次いだ1年目。役員らと知恵を絞って毎月「お楽しみ会」を始めた。「皆でいっぱい笑おう」と、芸事で支援するゲストを呼び、花見や小旅行、「スコップ三味線」の会も催した▼「和やかな仲間の縁をつくれた」という住民同士で将来のことも話し合い、「誰も孤立せず一緒に暮らせる集合住宅を設けて」と昨年初め、役場に要望した。だが、回答はなし。避難指示解除から間もなく1年になる今、住民は村内外へと別れ、世帯数は半分に減った▼引っ越しの風景が続く中、木幡さんも改築を終えた自宅に戻り、1年後に長男も同居の予定だ。農業を再開する若さはなく、近隣の帰還者もわずか。「それでも、前に進みたい。人生を村で全うしたいんだ」(2018.3.27)