人類の前に突如現れ、大地を進撃する。コントラバスやチューバによる重低音の変拍子のリズムが響く。映画『ゴジラ』(1954年初公開)の音楽である。故伊福部昭さんは短歌や俳句の拉鬼体(らっきたい)を意識して作曲した▼インタビュー集『独特老人』(後藤繁雄編・著)で説明している。<古池や蛙飛(かわずとび)こむ水のをと 松尾芭蕉>を例に挙げ、「今まで止まってたのがちょっと蛙が動くことによって、これから爛漫(らんまん)とした春が開いてきて地球が蠢動(しゅんどう)する」展開を表現したという▼「森友学園」への国有地売却を巡る疑惑も重なるところがある。ポチャンという音を、安倍政権や財務省は当初、大したものでないとして捉えた。読み違いだった。理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問は解明できたことがほとんどなく、むしろ不信の波紋が広がった▼文書改ざんは海外にも知れ渡った。思い出すのは暗黒社会を描いた小説『一九八四年』(ジョージ・オーウェル著)である。独裁国家の「真理省」は情報操作のために過去の文書書き換えをせっせとやっていた▼佐川氏はいわき市に生まれ、中学途中で東京へ移り東大、財務省の道を歩む。出世の階段を駆け上がるはずだったのに、踏み外してしまったのはなぜか。こちらの拉鬼体の結びは何とも物悲しい。(2018.3.28)