なくしたものの価値を後から分かるときがある。作家の沢地久枝さんは雑誌の編集者時代、詩人で作家の故中野重治から数多くの教えを受けた。<野蛮は研さんによって手に入れることができない>。これも一つである▼沢地さんが随筆で書いている。野蛮は生まれつき持つものなのに失われつつあるという。多くの国々は「個」の確立のため、血を流してでもこれを守る。日本人の野性味は一体どこへ行ってしまったのか、と嘆いている▼プロ野球はどうか。野蛮はどれほど残っているだろう。闘将、燃える男の星野仙一・前東北楽天副会長は生前よく言った。「がむしゃらになって闘わんかい」と。食うか食われるかの世界である。己の本能を信じて敵に向かっていけば必ずや活路は開ける、とハッパを掛け続けた▼セ・パ両リーグが今夜開幕する。東北楽天はビジターでロッテと戦う。秋まで143試合、理屈を超えた闘争心を見たい。これらの積み重ねによって、やがては2度目の日本一という高き峰にたどり着けよう▼米大リーグも始まった。春の語源に「発(は)る」「張る」の説があり、万物に生気がみなぎる。英語ならスプリング、泉やばねである。何だか心は弾む。よしっ、今季は激励のヤジでも飛ばしてみるか。きっと星野さんも苦笑いしている。(2018.3.30)