日本で初めてという。当初の役目を失い、老朽化したダムの撤去。日本三大急流の一つ、熊本県の球磨川にあった県営荒瀬ダムの撤去工事がこのほど終わり、豊かな流れがよみがえったと報じられた▼戦後の地域産業振興の電力源として計画され、1955年にできたダム。「商工業も所得も良くなる」「川の漁獲も増える」。バラ色の前宣伝に反し、予期せぬ水害や放流時の振動、水の濁りや悪臭、漁の不振が地元八代市の人々を悩ませる。河口の干潟もやせていった▼ダム撤去を訴えた長年の住民運動が県知事を動かし、5年半がかりの解体工事で清流が復活。「ホタルが飛ぶ生態系が戻ってきた」との声が伝えられた。球磨川の名物はアユ。昔は「尺鮎(あゆ)」で有名だった▼ダムが遡上(そじょう)の妨げになり、漁協は河口で稚アユを集めてトラックで上流に運び、懸命に放流してきた。撤去は資源回復に朗報だが、実は多くの先例がある。米国では過去20余年で900基近い老朽ダムが撤去され、各地の先住民がサケを捕る伝統を取り戻した▼民間のダムが多く、市民団体が費用を支援しているという。日本で戦後建設されたダム(堤高15メートル以上)は3000基余り。老朽化が進み、川の環境への住民意識も変わる中、撤去を巡る議論がもっとあっていいのでは。(2018.3.31)