お寺の入り口などでしばしば見掛ける「不許葷酒(くんしゅ)入山門」という石柱。葷酒、山門に入るを許さず。葷(香りの強い野菜)はお坊さんを元気にしすぎるから駄目、酒はもちろん持ち込むな。そういう意味だそう▼でも世間は広い。それなりに飲んべえのお坊さんもいたはずで、次のように読み下したそうだ。「葷は許さず、酒は山門より入れ」。なかなかの知恵者だ。伝統の戒律を読み方ひとつでさらりとかわして笑いも誘っている▼「女性の方は土俵から下りてください」。京都府舞鶴市で、大相撲の巡業のあいさつに立った市長が土俵で倒れ、女性数人が救命に駆け上がった。そこへ場内アナウンスがあったという。確かに土俵は「女人禁制」が長い伝統ではある▼その神聖な土俵の上で、八百長とみられる相撲を取ったり、プロレスのような肘打ちを食らわせたりの、おきて破りがしばしば続いてきた相撲界だ。女人禁制を律義に守り続ける以上、ほかにも守るべき伝統はたくさんある▼伝統だ、禁制だ、戒律だと言っても多くは絶えず変化していくものだ。混乱の中で場内アナウンスをしたのは若い行司だという。ネットなどでこっぴどく批判されているから、ここでは励ましたい。奮起して立行司に上り詰め、苦い失敗談を振り返ってくれれば。(2018.4.6)