紅花と言えば、山形市高瀬地区に広がる一面の黄色い畑を思い出す人は少なくないだろう。ちょうど今が種まきの季節だ。見頃は7月上旬。収穫した紅花は、口紅や着物を染めるのに使われる▼なぜ黄色の紅花から鮮やかな紅色が生まれるのか。高瀬地区が舞台のアニメ映画『おもひでぽろぽろ』(1991年)で、伝説として語られる場面がある。「娘たちは素手で花を摘み、トゲに指を刺されて血を流す。その血が紅の色を一層深くした」▼日本のアニメ映画界に大きな足跡を残した高畑勲監督が亡くなった。『おもひでぽろぽろ』のほか『火垂(ほた)るの墓』などの名作を発表。盟友の宮崎駿さんがファンタジーの世界を描いたのに対し、リアリズムの世界を追求した▼最後の作品となった『かぐや姫の物語』(2013年)でも姿勢は変わらなかった。「かぐや姫はなぜ、何のために、地球に来て月へ帰ったのか」「月に帰ることをなぜあれほど嘆き悲しむのか」。高畑さんはかぐや姫を生身の人間としてとらえて徹底的に考えた▼リアルなかぐや姫の物語は、淡彩画のような美しい映像と相まって世界中の人たちの心を捉えた。反戦、護憲を訴え、社会派として活動する一面もあった。かぐや姫のように多くの人に惜しまれながら巨匠は旅立った。(2018.4.7)