昔、東京でよく観戦した大学サッカーで、風のように速いドリブルでゴールを奪う選手がいた。相手が触れられぬほど軽やかな技。天才と騒がれ、日本代表に選ばれた。その元名選手が40余年を経て、大舞台を前に混迷する代表チームの命運を託された▼西野朗さん(63)。日本サッカー協会の技術委員長から9日、代表監督に就任した。6回連続となるワールドカップ(W杯)ロシア大会出場は6月半ばだが、チーム状態はどん底。選手との関係悪化も伝わった前任者の解任を受け、白羽の矢が立った▼日本リーグで活躍後に監督の道を歩み、「超攻撃的」と評された戦術でガンバ大阪などを強豪に育てた。記憶に鮮烈なのが22年前のアトランタ五輪。中田英寿さんらの若い五輪代表チームを指揮し、惨敗必至と予想された優勝候補ブラジルに勝つ▼世紀の番狂わせ-と世界中が驚いた「マイアミの奇跡」だ。が、西野さんらは難敵の小さな弱点を分析し、おごりも見通し、たった1度のチャンスを狙い通りに生かした。Jリーグで歴代最多勝監督ともなった勝負師の勲章だ▼とはいえ、W杯への時間はわずか。これまで前任者を支えるポストにおり、責任を背負う形の登板ながら、ファンの期待はただただ胸のすくような勝利。「ロシアの奇跡」を起こせるか。(2018.4.11)