見た目は悪いが、いい奴。そういうものにあこがれる。逆境に耐えたとならばなおさらで、宮城県古川農業試験場(大崎市)で開発された水稲品種「たきたて」がまさにそれだ▼古川農試が手掛け、今秋に本格デビューする「だて正夢」と同じ低アミロース米。弾力ある食感が特長で、食味の国際コンクールで頂点を極めたこともある。ただし、米粒が白濁しやすく、見た目が流通業者に敬遠されたことなどから、作付けは伸びなかった。作付け割合は県全体の1%にも届かず、一時、本年産の種もみの供給が県から受けられなくなる危機にさらされた▼それでも、味にほれ込む生産者と消費者がいる。大崎市古川の農業斎藤武康さん(67)もその一人だ。ひとめぼれ、ササニシキ、つや姫、だて正夢なども作る斎藤さんだが「やっぱりたきたてが一番うまい」と県などに掛け合って種もみを確保し、今、播種(はしゅ)作業を始めている▼同市を含む大崎耕土が昨年12月、国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に認定された。多様なコメを育んだ伝統的な水稲栽培が評価された。豊穣(ほうじょう)の地に残る「絶滅危惧種」のようなコメ▼各県がしのぎを削る銘柄米の戦国時代を迎えているが、地元ならではの貴重な「宝の粒」を残すのも、遺産認定地の役割ではないか。(2018.4.15)