4本のささ竹に大漁旗。真っ白な船体の「第十八観音丸」が福島県新地町の釣師(つるし)浜漁港に先日入った。近隣の造船所で進水した漁船で、地元の漁師小野春雄さん(66)の長男智英さん(36)が新しい船主だ。約80人の漁師仲間と家族がお披露目を待っていた▼紅白の餅、菓子、小銭のおひねりが船からまかれ、岸壁は祭りのにぎわい。「試験操業が続いて復興途上の浜には、めでたい出来事」「釣師の漁を受け継ぐ若手に、浜を活気づけてほしい」。先輩漁師らは祝いの言葉に希望を込めた▼釣師浜集落は東日本大震災の津波で流され、跡形もない。小野さん一家は公営住宅で暮らしながら漁に出る。が、福島第1原発事故後、県内の漁自粛は今も解かれず、漁師たちはほそぼそとした試験操業を強いられている。水産物への風評も根強い▼震災前の小野さんは2隻の船で弟常吉さん、3人の息子と漁をし、津波で弟を船もろとも失った。一時は智英さんらを陸の仕事に就かせたが、翌年の試験操業開始とともに呼び戻し、弟の形見となる船の再建も決意した▼「最初は反対もされたが、本格操業の復活を信じ、息子たちの未来に残すんだ。俺は俺で100歳まで漁師を続けるから」。その鍛錬のため、標高429メートルという地元の鹿狼山(かろうさん)に毎日登っている。(2018.4.17)